一の太刀でございます。
先日無事行われた全日本剣道選手権大会ですが、例年とは違う環境の中でも選手の皆さんが素晴らしい内容の試合をみせてくれました。
それでは今年も勝手に総括したいと思います。
優勝 茨城:松﨑選手 準優勝 大阪:村上選手
昨年に続き決勝まで上り詰めた松﨑選手が今年は優勝!
おめでとうございます!
準優勝は実力者・村上選手でした。
おめでとうございます!
優勝 茨城:松﨑選手
今年は「小手技」も磨いてきたとのことで、その言葉通り「出鼻小手」なども巧みに決めながら優勝してしまいました。
昨年からさらに化けた様子
圧巻の強さ
あの「面打ち」は健在であり、一本取られる場面もありますが、安定した強さを発揮していたと感じます。
筑波大学の学生として全日本選手権での優勝
同大学の先輩でもある警視庁・竹ノ内選手以来のことです。
決勝 茨城:松﨑選手 VS 大阪:村上選手
両選手ともに並み居る警察特練員の選手たちがいる中で地区代表として前回の全日本選手権にも出場しており、実力者同士の戦いとなりました。
巨漢選手同士の戦い
お互いの圧力を感じられる試合展開
そのような中、村上選手がググっと間合いを詰めてきます。
松﨑選手は間合いを図るようにススッと下がります。
その刹那、得意「飛び込み面」
それが村上選手の出鼻を捕らえ「面あり」!
村上選手としては攻めの意識があるなかでの打突となり、まさにここしかないタイミングでの一本でした。
その後さらに攻めにでてきた村上選手に対して、またもここといったタイミングで「小手」
これも見事「出鼻小手」となり
勝負あり
お見事でした
準優勝 大阪:村上選手
私が村上選手の存在を初めて知ったのはもう10年ほど前のこと
桐蔭学園高時代に某剣道雑誌に1ページ全身写真が載るインタビュー記事からでした。
「村上雷多」
すごい名前だなということ、そしてその体格の良さが印象的でした。
そして数年前に大阪体育大学助教となった姿を見たときには当時以上に大柄な体格
その剣道は「剛」一辺倒かと思いきや「柔」をみることもある「正剣」
埼玉・竹越選手の村上選手の感想「岩のように迫ってくる攻撃」というイメージがぴったりの恐るべき選手です。
奇をてらった技はださず、「三つの許さぬところ」
・技の起こり
・技の尽きたところ
・居ついたところ
このあたりで決まっているケースが多いように感じます。
王道の剣道
準優勝おめでとうございます。
四回戦 大阪:村上選手 VS 神奈川:森山選手
学生らしく攻撃的な剣道でここまで勝ち上がってきた森山選手
初太刀を攻めつつ出鼻も狙ったような村上選手の「飛び込み面」
二太刀目も似たような流れで「飛び込み面」
これが見事一本となります。
二本目は返しに行こうと積極的な森山選手
さすがに実力者です。竹刀を上げて相手が「面」「小手」の判断に迷う動きから「飛び込み面」
これも見事一本
そして三本目は村上選手がここぞといった「出鼻小手」を決め勝負あり
見ごたえのある試合でした
それにしても打突の機会良すぎます
第三位 鹿児島:星子選手
その世代随一の実力者、星子選手が三位入賞となりました。
おめでとうございます!
準決勝の相手は長年切磋琢磨してきた同門の松﨑選手
そこで勝ちきれなかったこと、ご本人の心境はお察しするに余りあります
それでも、星子選手の強さは疑いの余地はありませんね。
今大会でもこれはというシーンを幾度となくみせてくれました。
星子選手も私が手本にしている鹿屋大学:妹尾選手や西東京:神崎選手のような「くの字防御」のような受け方を基本としながら試合運びをしておるので、私としても大変気になる選手
■くの字防御
■神崎選手
皆さんご存じのように日本剣道界を背負うであろう逸材ですね
三回戦 鹿児島:星子選手 VS 兵庫:榮選手
お相手の榮選手はここまで素晴らしい試合展開で見事な打突を決めて勝ち上がってきた選手
その榮選手も星子選手相手となり、それまでとは違いなかなか打突できる機会が少ないようです
星子選手は誰と相対しても、その試合展開が大きく変わるといったことがないように感じます。
この試合も星子選手は変わらず基本的に自ら仕掛ける展開が多く優位に進めています。
しかし、さすがは榮選手、なかなか星子選手に決めさせません。
互いに際どい機会がありつつ延長戦
星子選手は事前に相手の反応を見つつ「突き」を選択
それが見事決まり強豪を退けました
好試合でした
第三位 福井:林田選手
変わらずの実力を見せつけてくれました林田選手
近年はずっと全国トップレベルであり続けているようです。
攻撃の姿勢を前面に押し出した剣道は荒々しさを兼ね備えた「正剣」で相手を圧倒します。
左右均等の正対した構えから繰り出される打突は相手としては見えにくいのでしょうか。とにかく強い。
おめでとうございます。
一回戦 福井:林田選手 VS 栃木:大平選手
筑波大学の学生である大平選手ですが、この試合でも一本目を素晴らしい「面打ち」で決めてしまいます。
相手の剣先を抑えつつ飛び込んだ「面」
さすがの打突でした。
たしか試合では一本目を決めたほうが勝つ確率は70%前後と高いものだったと記憶していますが
林田選手はその大平選手相手に、ものの見事に取り返し、三本目も奪ってしまいました。
剣先を小刻みに震わせながら仕掛けるスタイル
取り返した二本目は、独特の打突のように感じます。
三本目も林田選手らしい自ら攻め入って「小手・面」の「面」で勝負あり
圧巻の試合展開
注力した各試合観戦記
今大会で、注力した試合です。
好みに偏りがありますこと、ご了承ください!!
一回戦 東京:山本選手 VS 大分:梶原選手
45歳で出場の山本選手がどのような試合をするかが興味ありました。
山本選手は実業団で長年活躍されている名手
対する梶原選手も全国教職員大会団体3位3回・個人優勝3回などの実績を誇る手練れ
山本選手といえば「面打ち」が代表的な技ですが、試合展開では下がりながら相手を誘い、先をとらえて「飛び込み面」で決めるところをよく拝見しております。
この試合一本目はそれに近しく、かつその誘いも早々に打ち込んで決めています。
私としては山本選手らしい一本だなと思うところ
しかし梶原選手もさすがの名手
その後も攻勢をかけ続け、山本選手の得意とするその下がったところを素早く「面」を打ち込み出鼻をとらえて「面あり」
そして勝負の三本目
梶原選手の「片手突き」の直後に山本選手が「面」を打ち込みそれが一本で勝負あり
「片手突き」も機会よくもう半歩でも入っていれば一本になったのではないかというところでした
二回戦 新潟:木村選手 VS 兵庫:榮選手
木村選手はすでに今大会4回目の出場
その構えと動きから相当な実力者とわかります
対する榮選手も正剣の名手
この試合は榮選手が二本勝ちするのですが、実力者の木村選手相手に取ったその二本ともに素晴らしい打突でした。
榮選手は得意技を「近間での小手」としているとのことですが、どうやらこの試合の一本目がまさにそのものだったように感じます。
素晴らしい打突でした。
二本目も合気になった刹那、木村選手の出鼻をとらえた「面」
強豪の木村選手を相手にお見事でした
二回戦 香川:岩部選手 VS 宮城:武田選手
両者ともに名の知れた名手
岩部選手は国士館の学生で水戸葵陵高時代からその素晴らしい剣道で実績を積み上げている選手
武田選手もやはり国士館ですが、その大学時代、黄金期を築き上げた主力選手
素晴らしい剣道をする両雄の試合
岩部選手は若手らしく積極的に仕掛け、打突します
武田選手の構えが崩れにくいからかこの試合では特に「突き」を多用しています
それにしてもあの鋭い岩部選手の攻撃を武田選手はうまくさばきつつ好機をうかがっているように感じます
延長戦後もその状況はかわりません
岩部選手もそうそう崩れません
しかし、岩部選手が剣先を開いて状況をうかがう次の瞬間、すぐさま「諸手突き」!
これが見事に武田選手の喉元へ
「突きあり」で勝負あり
名勝負でした
二回戦 沖縄:山川選手 VS 徳島:白木選手
沖縄の地で日々「懸かる」稽古を旨とし、実力を高めてきた山川選手と国士舘大学で鍛え上げた地力で勝ち上がってきた白木選手の戦い
お互いが素晴らしいせめぎ合いの中で試合が続きます
緊張感ある戦い
白木選手は小刻みに仕掛け、国士舘らしいしっかりとした構えから繰り出す力ある打突は素晴らしい
山川選手の迫力ある気合と気持ちの入った剣道は、その正剣から繰り出される技により圧力を与えているように感じます
一進一退の攻防の中、延長戦で決めた白木選手の「小手・面」の「面」はお見事でした。
見ごたえある試合でした
三回戦 香川:岩部選手 VS 愛知:安藤選手
同学年の学生対決
岩部選手に興味があり注力しましたが、相手の安藤選手に驚きました
私は今大会で初めてみた選手なのですが、あの岩部選手に勝ってしまいます
聞けば高校も名門龍谷高校出身のようでそうとうの実力者
「突き」を多用する岩部選手にきわどい「諸手突き」をくりだしたり、それはまさしく一進一退の攻防
岩部選手もいつもどおりの鋭い攻撃を見せますが延長戦
安藤選手は手元をふっとあげてからの「飛び込み面」
「担ぎ面」のように岩部選手は「小手」の意識があったか反応が遅れ、安藤選手の「面あり」で勝負あり!
お見事!
三回戦 東京:山本選手 VS 大阪:村上選手
注目の一戦
攻めの圧力が相当強いと思われるあの村上選手を相手に、山本選手がいつも通りの誘いの後退からの「飛び込み面」を決めるのかが気になるところ
開始早々から村上選手は圧力をかけて攻めてきました
予想通り下がる展開の山本選手
似たような展開が続くと思われた刹那
山本選手が狙いすました「飛び込み面」
これが見事決まり「面あり」
いやー、さすがです
ところが村上選手もさすがの手練れ
取られた直後にも関わらず二本目開始からすぐさま間合いを詰め同様の展開
山本選手は下がり機を見てまたも「面」
しかし、村上選手は予測したように「小手」
見事な出鼻となり「小手あり」で勝負!
その後も山本選手はきわどい「面」を繰り出します
村上選手は少し攻め方を変えたように感じます。その後は仕掛けながらも様子を探るような展開
そして最後は山本選手が相手竹刀を制すような動きをしたと同時に村上選手は色のない「面打ち」
機会よく一本となり、勝負あり!
見ごたえある試合でした
四回戦 鹿児島:星子選手 VS 愛知:安藤選手
岩部選手を破った安藤選手が星子選手相手にどう戦うかが気になるところ
序盤は互角の戦い
徐々に星子選手が「小手」技を中心に主導権を握ってきたようです
安藤選手は岩部選手戦とは変わり手数が減ってきました
乾坤一擲の機会を狙っているのかどうか
星子選手はきわどい「小手」を何度かくりだしていましたが、延長戦でそれらが布石となったか、攻めて「小手」そしてそのまま「面」に乗り「面あり」で勝負あり!
素晴らしい一連の流れ
あの安藤選手を圧倒したかのような試合展開でした
準決勝 茨城:松﨑選手 VS 鹿児島:星子選手
両雄相対します
筑波大学の同門として4年間切磋琢磨してきた相手でしょう
手の内を知り尽くした者同士、緊張感ある試合展開となりました
試合後半に松﨑選手が裏の「面」を打ち込みます
それが布石となったか、次の展開で星子選手が手元を上げながら間合いを詰めてきます
そこから「小手」へ変化
さながら熊本・西村選手のような「小手打ち」!
松﨑選手は機をみて「面」!
この機会は松﨑選手に軍配が上がりました
これからも見てみたいと思う両雄の試合でしたね
準決勝 大阪:村上選手 VS 福井:林田選手
初太刀から激しい打突の展開!
お互い基本的に剛剣のイメージで、とにかく図抜けた実力をもつ両雄です
序盤に迫力あるせめぎ合いの中、村上選手が機をみた鋭い「出鼻面」を打ち、これが「面あり」となります
その後も「出鼻面」を村上選手が繰り出せば
林田選手の裏から「面」がきわどいところを打ち込みます
素晴らしい試合
さらに林田選手が「諸手突き」
そこに素早く村上選手が「面」
どちらが勝っても不思議ではありません!
追い込まれながらも林田選手は乾坤一擲の鋭い「横から小手」が村上選手の小手部位を捕らえますが、一本とならず!
そして試合終了
迫力ある見事な試合でした
おわりに
今大会は警察関係者が不参加の中、多様な選手が出場されました。
私から見れば皆さん「超」がつく一線級の選手ばかりなのですが、そのようなレベルの中でみれば、実績少なく難しい環境の中からも這い上がり、勝ち抜いてきた選手もおられるでしょう
できればそのような選手にスポットを当てられたらと思う次第ですが、私の勉強不足のためそうではない記事となってしまいましたね
レベルは違えど私も刺激を受けました
出場選手の皆さん、また運営に携わったすべての皆さんにお礼申し上げます
素晴らしい大会をありがとうございます
それにしても在野には本当に多くの実力者がいるものですね
美しい構えの選手も多く見受けられ、手本としたいところ
今年は例年通り11月3日に無事開催されることを祈ります
また皆さんもコロナに負けずご自愛ください!
ではまた!
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