皆さんこんばんは。一の太刀でございます。
今週の土曜日である9月2日は東京都剣道大会です。11月3日に開催される全日本剣道選手権の東京都予選ともなる私にとっても毎年参加している重要な大会なのですが、今年は残念ながら不参加となります(涙)
諸事情ありまして、8月に入ってからも稽古は2回、9月も同様のペースになりそうです。
こんなんで上達できるのか(泣)剣道がしたくてムズムズしております!!
では本題の剣道のお話です。本日は「妹尾舞香選手と防御について」です。
先日はインターハイにて2年生ながら女子個人・女子団体ともに優勝したこの妹尾舞香選手を私は以前から興味を持っていました。
正確には「今宿少年剣道部で培われた山内先生直伝の【くの字防御】」についてとても関心があったのです。
剣道における「防御」について 【懸待一致】
妹尾選手のことを書く前に、まず「防御」についてです。
剣道では「防御」の指導はほとんどされません。
完全に「防御」に入ってしまうことを良しとしていないかと思います。
しかし、「懸待一致」「懸中待、待中懸」などの「応じ」「待ち」「受け」を意味するような教えもあります。
「攻撃と同時に防御を忘れるな!」
とはどこかの映画で聞いたセリフですが、これも真理のひとつのような気がします。
今宿少年剣道部の強さの秘密 「くの字」防御
私は以前から試合において重要になる「打たれない」防御について考えていました。
打たれなければ負けることはない。しかし、当然防御中心になっていてはいずれ打たれます。
「守りながらも誘い出すものはないか」
参考としたのは東京西の雄「神崎力」選手です。
この方は手元をよく上げるのですが、ただ防ぐために上げるのではないのです。
「攻めて崩す」だけでなく、常に「誘って引き出す」ことを意識した剣道で応じ技をバシバシ決めています。
それをどうやればよいのやらと試行錯誤を続けていました。
そんな時ですが、以前、とある剣道雑誌で今宿少年剣道部の山内正幸八段の記事がありました。そこで「くの字」防御の説明がありました。
参考にしている西東京の某選手と似ているのです。
これこそが私が欲していた情報だとばかりに何度も読み返しました。
基本的なことを簡単に言うと「剣先を相手中心付近に置きつつも手元を左右に動かして腕と竹刀が『くの字』になる」形がそれとなります。
剣先及び腕の「高さ」は状況に応じて変化するもの。
ひとつの「構え」ともなる
ポイントは2つ
■自分が「小手」を打った後に竹刀を自分側に引き付けるのではなく
この「くの字」の体勢で残心をとることで、「小手返し面」「相小手面」「小手抜き面」などの応じ技をされても有効打になりにくくなる。
■相手の打ち気から「くの字」防御の体勢で相手を引き出すことでこちらが「小手返し面」「小手抜き面」を繰り出すこともできる。
その様に「攻めて良し、守って良し」のある意味、ひとつの「構え」にも似たものとなります。
■「くの字」防御について少し書いた記事はこちら
■「くの字」防御から「小手返し面」への記事はこちら
妹尾選手はこの「くの字」防御を完全にマスターしています。
妹尾舞香選手の試合運び
妹尾舞香選手は福岡県の今宿少年剣道部出身です。2017年現在は中村学園女子高校の2年生です。
先の山内先生の記事の中に、この妹尾選手のことが出ています。
全中優勝を果たした妹尾選手が同年少年玉竜旗(抜き勝負)に出場した時のこと。妹尾選手は男子の部で出場!
決勝で大将の妹尾選手が引き出され、相手はあと3人という状況。
「負けたことのない相手だったので、これなら妹尾は抜いてくれると思ったのですが、何を思ったか『始め』のと同時に相手を誘うでもなく面に跳んで、出小手をきれいに打たれて負けました。
その時は怒りました。『何もないのになぜあそこで面に行くのか。お前が負けるまで終わらないんだから、明日までだって試合できるだろうが』って」
剣道日本 インタビュー 引用
驚くべきコメントです。
絶対に打たれない自信を持って試合に挑めるのですね。
その鉄壁守備は相当なものです。
ここで妹尾選手は山内先生のご指導の下、「くの字」防御を自分らしく覚えたのでしょう。
この記事を読んでからずっと留めていた名前だったのですが、
今年8月に行われたインターハイで改めてその名を聞くこととなりました。
2年生ながら妹尾選手は大車輪の活躍をします。youtubeにもたくさんアップされていますね!
その中から、妹尾舞香選手のインターハイ決勝の動画を観てください。
いかがでしょうか。
一流選手のほとんどが、「足」をよく使う剣道をします。
「一眼二足三胆四力」の言葉同様です。
相手の安田選手はそのように小刻みによく「足」を使っています。ステップを踏むような足さばき。
しかし、対照的に妹尾選手は素早い足さばきを基本的に使いません。
「どっしり」とした構えから手元を上げ下げし、相手の剣先を払い、「緩急」を使った足さばきで相手を追い詰めています。
危険な「中間」を「くの字」防御を駆使してさばき、引き出して応じ技につなげます。
手数はあまり多くありません。
守りに相当な自信があるからでしょう。これだけ相手から仕掛けられても、そうは後退しません。
その堂々たる剣風に私は魅力を感じます。
それにしても、このインターハイで妹尾選手は2年生ながら個人戦で優勝。また、団体戦でも主力として優勝の活躍をしたのですが、優秀選手10人の中には選ばれませんでした…
同じく今宿少年剣道部出身で有名な井出選手(国士舘)も個人戦三位になりましたが、選ばれていません。
これが何を意味するのか。
手元を目元付近まで上げて完全防御の体勢になるケースが多いからでしょうか。
それにしても妹尾選手は入るべきだと、私は思いますけれども。
おわりに 高壮年剣道家へのヒント
皆さんはこの剣道を観てどう思われますか?
「手元を上げる」という一点では良い剣道とは言えないかもしれません。そういった意味で否定的に思われる方もいるかもしれません。
しかし、私はこの選手の剣道が好きなのです。
私は40歳を超えています。
足さばきが大事とはいえ、常に足を動かして素早く動くなどといった剣道は、ますますできなくなってきます。
若い方や、一流選手でそのような剣道をされる方も多いでしょう。
そんな彼らに対して、我々のような高壮年の剣道家が試合をすれば、どうなるでしょうか。
足を使えずに、さばくことも遅れ、その「スピード」と「パワー」に屈するケースは良くあることです。
普段の稽古でも同様ですね。
私自身、20代の若手と試合することもよくあります。同じ土俵で戦えば不利な状況に陥ることは目に見えています。
私はそれらを解消する、ひとつの方法ではないかと考えます。
これほど極端なことは良いとは思いませんが、この「くの字」防御を使いながら相手をよく見て、誘って引き出すことで応じ技につなげたり、相手の竹刀を殺すことで、その「スピード」と「パワー」に対抗する術になりませんでしょうか。
ひとつのヒントとして、私は妹尾選手がこの剣道をどの様に昇華させていくのか。
今後の行方も観ていきたいと思います。
西東京の雄「神崎力」選手について
先に出てきました「神崎力」選手もこの防御法の達人と思われます。
知る人ぞ知る凄まじい選手です。
ご存知ない方は、ぜひこちらの記事も閲覧ください!
ではまた!
【追記】その後の剣暦
2018年 3月の全国選抜大会で二連覇 7月の玉竜旗で三連覇 8月のインターハイでは三連覇 個人二連覇 主要大会のタイトルを総なめ
2018年9月開催の世界剣道選手権の日本代表選手に決定
高校ではまさに「無敵」の様相です。
【追記】フジテレビ系「ミライ☆モンスター」で特集
2018年8月19日(日)11:15~11:45にて放送される「ミライ☆モンスター」で特集されます。
■「ミライ☆モンスター」公式HP
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