2018年2月 追記しました。
皆さんこんにちは。残暑がきびしいですが、いかがお過ごしでしょうか。今週も私は2回の稽古ができそうです。
早速ですが剣道のお話です。本日は「出鼻面」です。とても重要な回となります。
同意される方も多いのではないかと思うのですが、私は「出鼻面」こそが剣道でも最も美しく目指すべき技の一つだと思っております。綺麗に決まれば相手も「まいった」と言わざるを得ない技ですよね。
数年前の全日本剣道選手権で神奈川の高鍋選手が2連覇をした際、決勝の相手は埼玉の東永選手でした。この年の東永選手は出鼻面を中心に勝ち上がり、高鍋選手もその出鼻面を警戒。最終的に突きで一本を取りましたが、このタイミングでも東永選手は出鼻面を狙っていました。高鍋選手が突きを選択していなければ東永選手の面が決まっていたのではないかというギリギリの勝負だったことを憶えています。
あの「最速の面」を持つ高鍋選手に出鼻面を警戒させる、それ自体がすごい技量がないとできませんよね!
また、2015年の全日本剣道選手権では神奈川の勝見選手が同様のキレのある出鼻面で決勝まで駒を進めました。リーチが短い勝見選手は相手を呼び込むことで合理的に間合いを詰めて素晴らしい出鼻技を何度も決めていました。
できればそのコツを教えていただきたいものですが、私がここでお話する「出鼻面」はこの東永選手や勝見選手の出鼻面とはタイミングが違うものですのであらかじめご了承ください。
出鼻面は遠間から
私もこの美しい技を自分のものにしたく5~6年前から都度、稽古で狙ってみましたが、うまくいったためしはありませんでした。
当時の私のイメージは相手が出てきたところを、「出来る限りのスピードで、前にほぼ踏み込まずその場での面を打つ」正に東永選手や勝見選手が繰り出していた技と同様のものでした。
しかしこれが非常に難しい!!ほぼその場で面を打つということは相手をかなり懐に呼び込まなくてはならず、呼び込んでからさらに速い振りで相手の面を捕らえなければならないのですから、技術と勇気の双方を高度に持ち合わせなければ成立しない技でした。
相手が出きっていないのにこらえきれずその場で面を打ち、はずせば無防備そのもので危険でもあります。面白いくらいうまくいかないのでこの数年は諦めモードに入っていました。
基本的な「遠間から腰の入った伸びのある面を打つ」ことが重要
ところが去年のある時期、剣道の技、人としてもとても尊敬している八段のY先生に「剣道は遠間での攻防であり、一足一刀の間合いで打つものである」とお教えいただきました。
出鼻面としてのアドバイスではなかったのですが、これが今の私にとって「面打ちの真理」となっています。
・遠間(一足一刀の間合い)から腰の入った伸びのある面打ちができるようにする
・打ち間は一足一刀の間合いから
と以前からお伝えしていますが、「出鼻面」でもこの真理が成功の道となっています。「なぜ遠間から打てないといけないのか」この答えがここにあります。この基本的な打突フォームが剣道においてはとても重要なものであると考えます。
「一足一刀の間合いからさらに一歩入ったところが実際の打ち間」として試合でも多くその間合いでせめぎ合いがなされていますが、ここでは切っ先が触れるか触れない「触刃の間合い(遠間)」から相手が一歩入ってきた瞬間に腰の入った伸びのある面を打ちます。
相手としては一歩入ったところは一足一刀の間合いですから、ここで打ってくる方、もう一歩入って打ってくる方の2パターンに分かれるかと思います。そうするとちょうど相手が一歩入ってから打とうとするそのタイミングでこちらの面が入ります。
この、「相手が入ってきた瞬間」が重要かと思います。このタイミングは相手も「いくぞ」と気持ちをだした瞬間なのでそこを打たれると対応しきれない「先の先」のものです。その瞬間を感じて素早く面を打つためには土台である「構え」ができている必要もあります。
リーチがある方であればこの間合いで面を打ては、この一歩で相手が止まったとしても、面を捕らえることができるでしょう。私は胴長短足、腕も短いですが、一足一刀の間合いからであればなんとか面を捕らえられます♪
では参考程度に画像を見てください。
「自分には近く、相手からは遠く」の間合い 届かなくとも出鼻面は脅威となる
この画像一覧を見ますと構えている際は相手の面が写っていません。しかし、打突のタイミングでは相手の面が写っています。私の竹刀は一足一刀の間合いでなければ届きませんので相手が前に出てくれたからこそ届いてると考えられます。
相手が一歩出たタイミングで打ったとしても、実は相手は一歩間合いを詰めただけであったということもあり得ます。その場合、こちらの竹刀が届かないこともあるでしょう。
しかしながら、そうなったとしても出鼻面は相手にとって脅威と感じるのではないでしょうか。
なぜなら、相手の打ち間は「一足一刀の間合いからもう一歩入ったところ」の可能性が高いからです。一足一刀の間合いに入っても相手は打たない(打てない)。しかし、こちらからは打てる。
これは「自分には近く、相手からは遠く」の有利な状況を生み出します。
試合を有利に運ぶための間合いの真理でもあるのではないでしょうか。
ちなみに相手が一歩で止まった場合の画像も掲載いたします。
まとめ
いかがでしょうか。
相手が打ってこなかったとしても効果はありだと考えます。長距離砲・キレのある直球があるということは野球での打者であっても投手であっても怖いものです。
もちろんこの技の前には攻めや誘いが必要です。待っているだけの応じ技では打たれる危険がかなり高くなってしまうように感じます。理想的なものは「打つぞ」と攻めて相手がこらえきれなくなり前にでたタイミングなどがそれとなるかと思います。または「こいつ何もしてこないな」「よしこちらから一気に前に出て居つかせよう」などと思わせるなどの誘いもありではないでしょうか。
私もまだまだでして、この攻めと誘いがまた難しいのですが、常に打ちに行けるしっかりとした「構え」と遠間(一足一刀の間合い)から面を打てるようにして、先の先を捕らえられる稽古をしていきましょう!
余談ですが、この遠間からの出鼻面を何度かお見かけしたのが東京の警視庁に所属している林選手です。遠間から鋭いタイミングでこの出鼻技で決めているのを何度か拝見しました。
ではまた!!
【追記】試合で一本を取った「出鼻面」はこちらから
試合での画像を載せた記事はこちらです。
コメント
一の太刀様
初めてコメントさせて頂きます。子供が剣道を習いだしたのと同時に復帰した典型的リバ剣のpontaと申します。
どのページも大変ためになる内容で、何回も読み返させて頂いております。私も高校生以来剣道を離れ、2〜3年に1回くらい、気が向いた時に母校の稽古に参加していた程度ですので、まずは体力的について行くのが大変という状態ですが、頑張っていきたいと思っています。
この記事のテーマである出鼻面ですが、「出鼻面こそ剣道の真髄である」とのご意見に深く賛同します。私は不器用なので返し胴などが撃てず、高校の時から出鼻面と出小手のみでした。高校の時はバネもあったので例え相手が出てこなくても飛び込み面っぽくなって一本を取れていましたが、復帰してからは、いかにして相手を引き出すか、いかにして相手を思うように動かすか、その結果として出鼻面を決める、ということをテーマに稽古に励んでおります。
この攻めの過程も深いものがありますが、剣道の立会いの要素が全て含まれていますし、さらに自らの経験から考えても、出鼻面を取られると精神的ダメージが大きいですよね。出鼻面で先制できれば、その後の試合展開も余裕を持てます。
これからも楽しみにしております。そのうち、どこかの試合場でお会いできたら楽しいですね。尤も、どなたが一の太刀様かわかりませんが(笑)。
これからも楽しみにしております!
pontaさん、こんにちは!コメントありがとうございます。
pontaさんもリバ剣なのですね!
「いかにして相手を引き出すか、いかにして相手を思うように動かすか」私もそのように考えて稽古しております。
出鼻面はとても難しい技ですが、だからこそ挑戦し甲斐もありますね。
pontaさんは東京住まいでしょうか。であればどこかでお会いできる機会があるかもしれません!
その際はぜひよろしくお願いします。
また何かあればいつでもコメントくださいね!
よろしくお願いします。
関東地方は、すごく寒いらしいですね……
さて、私の昇段審査も寒い出来でした……
詳細は、Twitterをご覧いただけると。
ヤッパリ審査は面ですよね。
凹んでおります。また、一足一刀からの刺し面打ちから、やり直しです。ていうか、オレはどうやって面打ってたのか??手足バラバラ病になってます。
ライトニングさん、コメントありがとうございます!昇段審査お疲れ様でした!
自分の剣道に迷いが出ること、ありますよね。私も多々あります…上達すべき壁をこえるチャンスかもしれないと思い試行錯誤する日々です。
お互い頑張りましょうね!!