皆さんこんばんは。一の太刀でございます。
それでは剣道のお話です。本日は「第17回世界剣道選手権大会をふり返る 団体戦」
前回の記事では個人戦をふり返ってみました。
その際の記事はこちら
今回は団体戦です。
国の威信をかけて(おおげさか!?)戦うことが個人戦よりも色が強いイメージがあります団体戦。
みているこちらも特に熱が入ります!
もうみなさん結果はご存知かと思いますが、今大会は男子・女子ともに個人戦・団体戦すべてにおいて見事「優勝」されています。
男子・女子 団体戦 決勝
男子は49チーム、女子は38チームが参戦していました。
当ブログでも何度かご紹介しましたが、外国チームの剣道に対する真摯な気持ちは素晴らしく、その向上心や勤勉さは頭が下がります。
海外の皆さんの記事
日本の先生方が世界へ散らばり指導されている機会もある様です。
アメリカももちろんですが、ヨーロッパの中ではベルギーなどが特に洗練された剣道をすると聞くことがあります。
そして各国でそれぞれの価値観を持った剣道が見受けられます。
年々レベルが上がってきている世界各国を相手に我らが日本代表は今回も勝ち上がってきます。
そして、決勝へ…
女子 決勝戦
決勝の相手は韓国です。
我らが日本代表女子チーム構成は次の通り
先鋒:渡邊選手
次鋒:髙橋選手
中堅:富永選手
副将:山本選手
大将:松本選手
先鋒:渡邊選手
先鋒のイメージそのままに、積極果敢に攻め入ります。
韓国戦では重要な場面となる「鍔迫り合い」から相手が引き技で下がるとすかさず追って「面」!
しかし、間合いの攻防から際どい「面」を打たれます。
審判の旗は副審一人だけ!
危ない場面です。
私などであればこのあたりですぐに焦ってしまいますが、さすがは渡邊選手!
冷静にその後も自分の剣道をします。
そして今度は渡邊選手の「一歩目で振り上げ二歩目で面」の大技!
これが良い機会で打ち込みましたがギリギリで防がれます。惜しかった。
その後も一進一退の展開にて「引き分け」
次鋒:髙橋選手
手元を上げつつ攻め入り相手の様子を見ているかのようです。
そして剣先を巧みに使い相手の竹刀を殺しながら間合いに入っていく攻め。
その後「引き面」が良いタイミングでしたが打突部位に入りません。しかし、良い流れ。
中盤に入り、それまでは間合いを詰めて攻め入っていた高橋選手でしたが、突如として「一足一刀の間」から一気に「面」の打突体勢!
しかし、その一歩目では届かないとふんだか、すかさず二歩目の踏み込みで続けて「面」!
相手は一歩目で完全に「居ついて」いました。
その距離からくると思わなかったのでしょう。
素晴らしい「面」で一本先取。
その後は安定の試合運びで「一本勝ち」
中堅:富永選手
長身の上段、富永選手は積極的に前に圧力をかけていきます。
中盤に手元を上げた相手の逆胴に打突を繰り出します。良い機会かと思いますが旗は上がりません。
直後に上段の定石のような「片手面」!
相手はなんとか防いだといった感。審判の旗はひとつのみ。
おしかった!
それにしても富永選手が「鍔迫り合い」からお互い離れようとする動きを見せるも、相手はなかなかそれを許してくれませんね。
その後も比較的「鍔迫り合い」が長いイメージ。
そして「引き分け」
副将:山本選手
いつも通り足を使いながら攻め入る山本選手。
右回りに動きつつ相手の様子を伺います。
山本選手が攻めいて鍔迫り合いになり、それが長く続くといったシーンが多くみられます。
お互い決定打がなく、「鍔迫り合い」の攻防が目を引いた試合です。
山本選手としては攻めながらも「負けない試合」をしたといったところでしょう。
「引き分け」
大将:松本選手
立ち上がり早々に間合いが詰まり、合気となった刹那
松本選手は「面」
お相手は「小手」
松本選手の始動、また振りも早く素晴らしい「面」で一本先取!
これで圧倒的に有利な立場となりました。
相手は二本勝ちしなければ道はありません。
しかしこちらは日本屈指の強者である松本選手です。
相手の得意の「鍔迫り合い」からの攻防も、時間を使ってしっかりと対応しています。
途中、相手の「引き面」を「追って面」!
鋭い打ちに会場も沸きます。
「鍔迫り合い」からの反則を松本選手は取られますが、この展開であれば問題にならないでしょう。
相手に取られそうになる気配は感じられないほど安定しています。
そして、試合終了。
「一本勝ち」
結果 二対0で勝利!
素晴らしい試合でした。
日本代表の優勝です!!
それにしても大将の松本選手はみるからに強いとわかるような剣道をされますね。まあ、出場メンバーは皆さん凄いですけれども。
動画をどうぞ!!
男子 決勝戦
こちらも決勝のお相手は韓国。
日本代表チームのメンバーは次の通りです。
先鋒:前田選手
次鋒:星子選手
中堅:竹ノ内選手
副将:西村選手
大将:安藤選手
凄い面子です。
先鋒:前田選手
私の大注目選手である前田選手が先鋒です。
開始早々から「鍔迫り合い」の攻防
離れて「縁を切る」間もなく相手選手が一歩目で振り上げ二歩目で「面」!
前田選手はギリギリで防ぐも鋭い打ち込みに旗は三本上がってしまいます。
しかし…前田選手は前への圧力を強め相手を揺さぶります。相手の得意の「鍔迫り合い」「近~中間」での攻防も負けてません。良い「面」を繰り出します。
そして今度はこちらがと、「鍔迫り合い」から前田選手から離れるような動きをとり、相手は引き続き「縁を切らず」に前に詰めてきた刹那!
半歩下がってからの「出鼻面」!
二本目で取り返します。
鋭い、前田選手らしい打突でした。
しかし、相手もさすがといったところ。その後、前田選手のあの鋭い「面」を「返し胴」です。
しかし有効打とはならず。
日本の剣道であればおよそ打ってこないであろう「鍔迫り合い」の攻防からの「前に踏み込む面」で翻弄されます。日本人の私としては正直言ってこれらの技が有効打になってしまうとだいぶ複雑な気持ちになるでしょう。
しかし、これも「世界戦」の洗礼でしょう。
前田選手はその後も「攻め入ってからの打突を繰り出しますが決定打は出ず。
「引き分け」です。
■前田選手の記事
その剣道は恐るべき可能性を秘めているかのよう…
次鋒:星子選手
私はこの団体戦で星子選手がレギュラーに抜擢されていることに少々驚きをおぼえました。
星子選手がいくらこの世代の頂点に君臨しているとしても、他には経験豊富で実績も十分な勝見選手や先鋒の前田選手と同様に大阪府警で活躍している土谷選手、さらには大城戸選手や林田選手もおります。
その彼らを押しのけて決勝でもメンバー入り。凄いものです。
相手は力技でぐいぐい押すタイプのよう。そして韓国人選手特有の「鍔迫り合い」「近間」からの「前に踏み込んで」の打突をしてきました。
その技で打突部位にあたるかどうかの際どい「面」
星子選手は間髪入れずに「胴」
緊張感が高まります。
世界大会の経験も浅い星子選手で大丈夫なのか…
大丈夫に決まってます!!
すぐさま星子選手は学生らしい「引き面」できわどい打突!
そして「飛び込み面」から変化して見事な「小手」が決まりました!
相手も強引に「面」を続けて打ってきたところはさすがです。
その後も星子選手は「面から軌道を変えた小手」の鋭い打突。手元を上げた相手の小手にヒットしましたが旗は一本のみ。
素晴らしい打突です。
そして安定の試合運びで終了。
「一本勝ち」
中堅:竹ノ内選手
その強さには安定感すら感じる竹ノ内選手の登場です。
相手はかなりの長身のようですが、竹ノ内選手はその圧力にまったく負けていません。
早々に韓国人選手得意の「鍔迫り合い」の攻防からの「前に踏み込んでの面」
打突部位には当たりませんが竹ノ内選手も少々崩され様子。
しかし、星子選手同様にすぐさま相手の「胴」を打ち込みます。
相手との距離がだいぶ離れたところでお互い間合いを詰めていき、「一足一刀の間合い」に入ったと同時に竹ノ内選手の「飛び込み面」!
相手も微妙に遅れて打突動作に入った様子。
これが完ぺきな「出鼻面」となり一本先取!
このあたりの竹ノ内選手の「勝負勘」というか「センス」というか、凄いものを感じます。
当然、韓国人選手対策として間合いが詰まると同時に打ってくるのを想定してかとは思いますが、それにしても竹ノ内選手の「勝負強さ」を感じたシーンです。
相手も自分が遅れたことを感じてか途中から「避けよう」としているところは恐れ入ります。
二本目開始直後から竹ノ内選手は今度は「誘っての出鼻面」!
良い機会でしたが防がれます。
さらには「鍔迫り合い」から相手が表から押し込んで「体を崩す」ケースが何度かあったことを把握してか
この同様の場面、押し込まれた瞬間に「引き面」を繰り出します。相手は「引き胴」。
これは竹ノ内選手の良い機会をとらえた打突かと思われましたが審判の旗はあがりません。
これ以降は安定感ある試合運び。
どちらかと言えば焦る相手に対して竹ノ内選手が時折見せる打突が効果的だったように思えます。
「一本勝ち」
■竹ノ内選手の記事
堂々たるその姿は…
副将:西村選手
今回の5人の中では一番実績のある西村選手。
準決勝では大将でしたがこの決勝戦では副将として参戦。
竹ノ内選手の相手も長身でしたが、この西村選手の相手はさらに高身長の方。
西村選手との差がだいぶ目立ちます。
あの分厚い肉体を持った西村選手を上から押し込むように「体を崩して」きます。相当な圧力なのでしょう。
開始早々「鍔迫り合い」ですが、その後の初太刀では西村選手は得意の「小手」!
相手はそれに合わせるように「小手・面」
「相小手面」狙いか、当然ですがやはり相手も研究しているのでしょうね。
そしてまた「鍔迫り合い」の攻防。しかし、我らが西村選手もこの間合いは得意のエリア!
シンプルな素早い「引き面」!
これが見事一本となります。
この場面でチームとして二勝してさらに西村選手が先手をとりかなり有利となりました!
このままいけば三勝目をとりチームの勝ちは確実となります。
防御にも安定感がある西村選手です。
「これはいける」と勝手に期待が膨らみます。
その直後も西村選手の相手を追って「小手」が審判の旗を一本あげさせます。
しかしほか二人が不十分。
良い流れです。
そしてまたも「鍔迫り合い」から離れてから「縁を切らず」にすぐにお互いが打突。
西村選手は得意の「手元を上げさせてからの小手」
お相手は西村選手が前に詰めてきたところを感じてか「出鼻面」狙いの「面」
西村選手の「小手」は少々深いところを打突し相手の腕あたりをヒットか。
相手は西村選手が「小手」を打ちながら「面」を守るための体勢に入ったところを打突し「空を切り」ます。
しかし、審判の旗は相手に三本!
機会として「出鼻面」であり西村選手が相手に潜り込んでしまったように見えたからか。
う~ん、致し方ないシーン。際どい攻防が続きます。
これで勝負!
相手も勢い付きます。西村選手は踏ん張りどころ。
お互いが「引き技」で応戦。一進一退の攻防。
そして相手が「鍔迫り合い」から「表から押し込み裏の引き面」
これが旗三本…
私には西村選手はこれを防いだようにみえますが…致し方ありません。
痛恨の逆転「負け」
さすがに簡単に勝たせてはもらえません。
■西村選手の記事
今大会はツキがなかったか
大将:安藤選手
日本の大将に相応しい選手。
安藤選手は個人戦でも優勝を飾っています。
相手はその個人戦決勝と同じ方。
開始早々学生のようにいきなり「面返し胴」を打ってきます!このあたりは日本人とはやはり違う剣道だなと感じます。
しかし、二本勝ちしなければ負けですから相手も相当なプレッシャーでしょう。
「鍔迫り合い」の攻防でもそれまでにない程に圧力をかけてきます。
「近~中間」からの独特の打ち込み。
虚をつく捨て身の「飛び込み面」などを繰り出して安藤選手に襲い掛かります。
しかしながら…安藤選手はそれらを真っ向から迎え撃ちます。そして、負けません。
相手のお株を奪う近間からの「面」!
しかし旗はあがりません。
相手も「出鼻小手」で応戦。
しかし打突は深く、腕から肩口にヒットで無効。
そして、安藤選手は「小手」を誘っての「返し面」!
これが旗三本あがり「面あり」
相手に防がれたようにみえますが良い機会でした。
これでチームの勝ちは目前!!
その後相手も意地をみせ、難しい機会から離れ際の「面」「引き面」でこれが旗三本上がってしまいます。
これで勝負!
直後に安藤選手が「面」の軌道からの「小手」で見事ヒット!
しかし旗は上がりません。軽かったか!
その後安藤選手は「鍔迫り合い」から離れないことで反則を一回取られた様子。
意地と意地のぶつかり合い。
安藤選手も打突を増やしていきます。
そして…試合終了。
「引き分け」
■安藤選手の記事
全てにおいてハイレベル。素晴らしい選手です!
結果 二対一で勝利!
これにてチームは勝利!
日本代表の優勝です!!!
動画をどうぞ!
おわりに
毎回この世界大会では独特の緊張感があります。
各国がそれぞれの「剣道」をしてきます。我々が目指すところの「剣道」ではないものもあるでしょう。
特に韓国人選手の試合は「まず打突部位に当てる」
一見、これを「第一」としているように見受けられます。ですから、「当たっていなくとも機会が良ければ一本となることもありうる」といったようなその過程も大事とする日本的な考えは受け入れられないのかもしれません。
我々が「打つべき機会ではない」と考えるシーンからでも躊躇なく打突してきます。
そういった他の国々の別の考えを日本も理解を示すかどうか。
オリンピック参加の是非についても関係してくるものでしょう。
■オリンピック参加について
この大会の意義については賛否両論あるかと思います。
参加を続けるのであれば、より「一本」の定義を明確にし、他国の価値観をある程度、受け入れなければならないと感じます。
世界的に人気のサッカーでも、その国々によっての特徴があるのが当然ですから「国際競技」とはそのようなものなのでしょう。
ただ、この大会を日本が不参加とすれば、我々が理想と掲げる「剣道」が、やはりあらぬ方向へ向かってしまうことも危惧せねばならないでしょう。
理想と掲げる愛すべきこの「剣道」を汚されるのではないかという不安の気持ちもあります。
この大会をみて複雑な気持ちになる方も多いかと思いますが、とにもかくにも私たち一般の剣道家としては日本がよき盟主であり続けるべく、日々精進するのみです。
そう、迷いなく、我々の目指すべき「剣道」を続けることが、重要ではないでしょうか。
まあ、実際問題として世界大会においての他国対策はもちろん必要だと思いますけれども。
と、勝手言って失礼しました。
繰り返しとなりますが、日本代表選手団の皆様、お疲れ様でした。
そしてこの誇らしい結果をありがとうございました。
よーし、稽古するぞー!!
ではまた!
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