皆さんこんばんは。一の太刀です。
昨夜は稽古ができたのですが、どうも調子がイマイチ。先日のヒザの向きを直して改善されたばかりですが、他にもまだ原因がありそうです。12月にも冬の区大会があるのでそれまでに調子を上げていきたいところです。
では本日の本題の剣道のお話。「面打ちの押し切り」についてです。
個人的意見もふんだんに入っていますので、あらかじめご了承ください。
よく、押し切りか引き切りかの話がありますね。一般的に「押し切りはない」という意見が多い様に感じます。
しかしながら、面打ちは「押し切り」
この言葉に間違いはないと思っています。
「角度」と「技術」で押し切る
確かに、刀には「反り」があるので引き切りで、というよりも、普通に刀を振れば反りが引き切りにしてくれて切れると思います。しかし、なぜ剣道の打突フォームがあのようになったのか。下まで切り下げないのか。
これは胴体の下まで切り下げる必要がないからで、面は「鼻先あたりまで切れればよい」からです。
おそらく誤解されている方もいるのではないかと思いますが、面の打突の際、面布団にあたった方が「パコン」と良い音がするので上から「たたっ切る」イメージになりがちです。
しかし、本来は「おでこの上」の箇所からすり込むように押し切るのです。ですので「ガシャ」というような音がするものかと思います。
和菓子を切る「刀の形状」に似た楊枝(菓子切り)があるかと思います。
これで「ようかん」を上から押し切るとようかんの切り口の周りが崩れて綺麗に切れないと思います。引き切りでも難しいですが、これで「押し切りでは無理がある」と誤解している方が多いと思います。
しかし、ある角度からすり込むように押し切ると綺麗に切れます。これ本当です!
私の先生はスッと綺麗に切っていました。しかし私はうまく切れません…
私は刀で試し切りなどしたことがありませんが、この菓子切りで「刃筋や切り方の技術があること」を理解することができます。
また、実際の刀の場合は重みもあるので力をあまり使わずに「スッ」と切ることができるようです。
ちなみに「たたき切る」は剣道では存在しないと思います。叩くように切るは別の技になるかと。
剣道に力はいらない
教育大出身で一刀流も本格的に学び、大学剣道でも監督を務めていた私の先生はよく言っていました。
「剣道に力はいらない」と。
あくまでもイメージとして参考程度に見ていただきたいのですが、どの様な切り方なのか画像を添付します。
いかがでしょうか。
私ごときの画像ですのでうまくできているかは謎です。
そもそも剣道の動きが「刀法」と別物と考える方がおかしくなると思います。ただのスポーツと考えてしまうにはちょっともったいないですよね。
実際の稽古の中で、この打ち込みをすることはかなり難しい現状があります。しかし、この意味を理解していることで剣道の質が高まることは間違いないかと思います。
なかなか実践することは難しいですが、「稽古」の文字通り、古を学ぶことを意識していくことで、しっかりした剣道を身に着けられるのではないかと考えています。
昭和の剣豪 高野孫二郎先生の飛び込み面
少々余談になりますが、私はあの高野佐三郎先生のお孫さんである高野孫二郎先生の飛び込み面の映像を見ました。
スパッと表現したらよいでしょうか。最短距離で相手の面へ向かい、かつ、打った後に竹刀が跳ね上がっていませんでした。
あれはまさしく「押し切りの面打ち」でした。
私が難しいと思っている実戦での面打ちで押し切りをしていることに驚愕します。
追記
この記事より下のコメント欄に素晴らしい解説を下さった方がおります。
とてもわかりやすいのでぜひご覧ください。
ではまた!
コメント
私も個人的見解を述べさせていただきます。
まず押し切りと引き切りついて誤解が蔓延していると思います。
押し切り、引き切りとは刃を押しながら切るか引きながら切るかではなく、柄を押しながら切るか引きながら切るかの違いです。
剣道の面打ちは柄を押しながら切るので押し切りであり、剣術一般の正面斬りは柄を引きながら切るので引き切りなのです。
ここで言う押すは前面の敵方向であり、引くは切り終わりへの方向になります。
力の方向だけを見れば鐔方向斜めに力を加えるのが剣道、柄頭方向斜めに力を加えるのが剣術一般です。それを人体力学的にどのように力を使うか表現すると剣道は押す、剣術一般は引くとなるのです。
刃の動きを基準にするなら剣道は押し切り、剣術一般は圧し切りです。
まな板に乗せた大根に菜包丁を前方にスライドさせて千切りにするような切り方が押し切りであり、塊肉を肉包丁で上から叩き切るのが圧断であり、圧し切りであり、引き切りなのです。
重ねて書きますが、押し引くとは人体力学的な力の使い方からの表現なのです。
剣術一般の正面斬りでは頭頂から叩き切るように斬るのが正しい切り方です。決して柳葉包丁で刺身を引くように斬るのではありません。
尚、剣術一般には押し切りも、刃を滑らせるように切る引き切りも、パンと叩くように打つなど様々な技法があります。
そして真剣でも当然どちらの戦い方もあります。江戸時代末期、平服での戦闘で剣道のように遠くから面打ちを行ない動きが鈍くなったところに止めを刺すやり方が有効だった事が文献に残っています。しかし最初の攻撃で致命傷を与える事は殆ど不可能という弱点がありました。
日中戦争初期には陸軍には政治的に剣道家の力が優位だったため突きを不当に低く評価し面打ちを過剰に評価していました。ヘルメットを被っていた敵にも剣道の面打ちで攻撃し多くの日本兵が白兵戦で苦戦した史実があります。そのためそれ以降は剣術家の白兵抜刀術を陸軍、海軍が取り入れた経緯があります。
剣術一般の斬撃の基本は一撃必殺です。
ですから剣道家が剣術家一般と平服、刀のみの戦いをした場合、剣道家の攻撃だけが先に入ったならば殆ど勝ちますが、同時打ちになれば大変厳しい事態になるでしょう。
長々と書きましたが押し切り引き切りについて伝われば幸いです。
通りすがりの剣術家様
貴重な、また専門的なコメントありがとうございました。
その道に深い造詣をお持ちなのですね!
私の振りは打突の「冴え」をつくる意味合いかもしれません。
勉強になります。
ありがとうございました。